位相空間論において、私たちが直感的に親しんでいる「距離空間」の性質を極限まで抽出していくと、最終的に「コンパクト生成空間($k$空間)」という非常に都合の良い圏論的舞台に到達します。
本稿では、この美しい階層構造を一つ一つ解き明かし、右側の空間への包含関係を完全に証明します。
コンパクト生成空間の定義は、「任意の $k$閉集合が、通常の閉集合になること」である。この対偶である
「$A$ が閉集合でない $\implies A$ は $k$閉集合ではない(あるコンパクトハウスドルフ空間 $K$ と連続写像 $g: K \to X$ が存在し、$g^{-1}(A)$ が閉集合にならない)」
を示す。
Step 1: 点列の抽出
$X$ は列型空間であるから、「$A$ が閉集合でない」ならば「$A$ は点列閉集合ではない」。
すなわち、ある $A$ 内の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty \subset A$ と、$A$ に属さない極限点 $x \notin A$ が存在して、 $(x_n)$ は $x$ に収束する。
Step 2: テスト空間 $K$ の構成
コンパクトハウスドルフ空間として、自然数の集合 $\mathbb{N}$ を離散位相とし、そこに無限遠点 $\infty$ を付加した1点コンパクト化空間
$$ K = \mathbb{N} \cup \{\infty\} $$
を考える。この空間 $K$ における $\infty$ の基本近傍系は $\{ U_N \mid N \in \mathbb{N} \}$(ただし $U_N = \{n \in \mathbb{N} \mid n \ge N\} \cup \{\infty\}$)である。
Step 3: 連続写像 $g$ の構成と連続性の確認
写像 $g: K \to X$ を次のように定義する:
$$ g(n) = x_n \quad (n \in \mathbb{N}), \quad g(\infty) = x $$
この $g$ が連続であることを示す。
各 $n \in \mathbb{N}$ は $K$ の孤立点であるため、$n$ での連続性は自明である。
$\infty$ での連続性:$X$ における $x$ の任意の開近傍 $V$ を取る。$(x_n)$ は $x$ に収束するため、ある自然数 $N$ が存在して、 $n \ge N \implies x_n \in V$ となる。このとき、$K$ における $\infty$ の開近傍 $U_N$ を考えれば、$g(U_N) \subset V$ となり、$\infty$ でも連続である。よって $g$ は連続。
Step 4: $g^{-1}(A)$ が閉集合にならないことの確認
$g$ による $A$ の逆像 $g^{-1}(A)$ を調べる。
構成より、すべての $n \in \mathbb{N}$ について $g(n) = x_n \in A$ なので、 $\mathbb{N} \subset g^{-1}(A)$ である。
しかし、$g(\infty) = x \notin A$ であるため、 $\infty \notin g^{-1}(A)$ である。
空間 $K$ において部分集合 $\mathbb{N}$ の閉包は $K$ 全体($\infty$ は $\mathbb{N}$ の集積点)である。極限点 $\infty$ を含まないため、$g^{-1}(A)$ は $K$ における閉集合ではない。
以上により、「$A$ が閉集合でない」と仮定した結果、$A$ が $k$閉集合の条件を破ることが示された。対偶をとって、$X$ はコンパクト生成空間である。
$X$ がフレシェ・ウリゾーン空間であるとする。$X$ が列型空間であることを示すには、「$A \subset X$ が点列閉集合ならば、$A$ は閉集合である」ことを示せばよい(逆の「閉 $\implies$ 点列閉」は任意の位相空間で常に成立するため)。
$A$ を点列閉集合とする。背理法を用い、$A$ が閉集合でないと仮定する。
$A$ が閉集合でないならば、$A \subsetneq \bar{A}$ であるため、ある点 $x \in \bar{A} \setminus A$ が存在する。
ここでフレシェ・ウリゾーン空間の定義を適用する。
$x \in \bar{A}$ であるため、$A$ 内の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty \subset A$ が存在して、$(x_n)$ は $x$ に収束する。
しかし、いま $A$ は「点列閉集合」であると仮定している。
点列閉集合の定義より、「$A$ 内の点列が収束するならば、その極限点は必ず $A$ に属する」はずである。したがって、極限点 $x$ は $x \in A$ でなければならない。
これは最初に取った $x \in \bar{A} \setminus A$ (すなわち $x \notin A$)という事実に明確に矛盾する。
したがって仮定は誤りであり、$A$ は閉集合でなければならない。よって $X$ は列型空間である。
$X$ を第一可算空間とする。任意の部分集合 $A \subset X$ と、$x \in \bar{A}$ を任意に固定する。
フレシェ・ウリゾーン空間であることを示すため、$x$ に収束する $A$ 内の点列を具体的に構成する。
Step 1: 減少する可算局所基の用意
$X$ は第一可算であるため、点 $x$ の可算な局所基が存在する。それらの有限交叉を取ることで、単調減少する開近傍の列
$$ U_1 \supset U_2 \supset U_3 \supset \dots \supset U_n \supset \dots $$
で、局所基をなすものを構成できる。
Step 2: 点列の抽出
$x \in \bar{A}$ (閉包の元)であることの定義から、「$x$ の任意の近傍は $A$ と交わる」。
したがって、各 $n \in \mathbb{N}$ について近傍 $U_n$ を考えると、$U_n \cap A \neq \emptyset$ である。
よって、各 $n$ に対して要素 $x_n \in U_n \cap A$ を1つずつ選ぶことができる。
このようにして、$A$ 内の点列 $(x_n)_{n=1}^\infty$ が構成される。
Step 3: 収束性の証明
この点列 $(x_n)$ が $x$ に収束することを示す。
$x$ の任意の開近傍 $V$ を取る。 $\{U_n\}$ は局所基であるため、ある自然数 $N$ が存在して、 $U_N \subset V$ となる。
列の単調減少性により、任意の $n \ge N$ に対して
$$ U_n \subset U_N \subset V $$
が成り立つ。点列の構成より $x_n \in U_n$ であるため、
$$ n \ge N \implies x_n \in V $$
となる。これはまさに点列 $(x_n)$ が $x$ に収束することの定義である。
以上より、$X$ はフレシェ・ウリゾーン空間である。
上記は「距離空間」の点列的性質の拡張というアプローチでしたが、局所コンパクトハウスドルフ空間(例えば多様体や $\mathbb{R}^n$ など)も、強力な十分条件として直ちにコンパクト生成空間になります。
局所コンパクトハウスドルフ空間では、各点が「コンパクトな閉近傍」を持つため、空間全体がコンパクト空間たちのパッチワークのように扱え、商空間の特徴付けなどを通じて容易にコンパクト生成性が導かれます。